吸血姫の高貴なお食事

扉を開けると、大きな部屋の中、一人の少女が立っていた。

「ごきげんよう。さっ、遠慮しないで部屋に入ってきていいですわよ」

そのまま少女……名前はティアと言うらしい。

彼女の言葉に従って、恐る恐る部屋の中に入る。



「本日貴方様を呼んだのには訳がありますの、ちょっとその、人間というものを真面目に観察したくなりましたの」

椅子に座り、横に来るよう手招きをする少女。

「あらあら、そんな緊張しなくていいですわよ。さ、私の横に座るのです」

旅の途中、道に迷い、気がついたら倒れていた。

そして目が覚めると城の中、偶然近くを通った彼女の気まぐれで助けられた。



「始めまして、私はこの城の主、ティアと申します」

椅子に座り、改めて少女が挨拶する。

金髪で、何処か顔に生気を感じないが、それが返って美しく見える、不思議な少女。



「ふむふむ……う〜ん、見た目はそんなに私達と変わらないのですわね……失礼……強いて言うのなら、歯の方ぐらいでしょうか、違いは」

でも、美しく見える理由は知っている。

人間を真面目に観察したい、私達と変わらないという台詞、これまでに街で聞いた噂。



「今まで私はヴァンパイアこそが高貴で至高な、全ての頂点に君臨する種族だと……まぁ今も思っているのですけど」

彼女は吸血鬼で、普通の食事の他に人間を捕らえ、その血を吸うらしい。

「じゃあ何故ヴァンパイアは他の種族より、例えば貴方様のような人間より優れているのか、詳しい認識をしておりませんでしたの」

こちらをぼーっと見つめながら、不思議そうに観察する少女。

考えが読めない視線が怖い、でももしかしたら、本当に人間を調べたいだけなのかも。



「そのような訳でして本日は貴方様を捕らえ、じっくりと人間とヴァンパイアの違いを観察しようと思うのですわ」

捕らえ……という言葉が少し気になる。

「幸いあなた様は私の領内で倒れていた人間、運が良かったですわね、ヴァンパイアとこんな近くで触れ合えるなんて滅多にないのですよ」

両手を叩き、少女が楽しそうに笑顔を見せる。

その無邪気な顔に少しだけ警戒感が解けてきた、助けてもらったのは事実だし、少し様子を見よう。



「もしかしたら、これは巡りあいなのかもしれませんわ。下等な人間と高貴なヴァンパイアプリンセスの恋、最近そのような本を読みましたの」

そう言いながら、こちらの手を取り少女が立ち上がる。

見た目もまだ10代ぐらいに見えるし、そういう恋愛物が好きなんだろうか。

「うふふっ、怯えないでいいですわよ。さ、ベッドに行きましょうか。もっと私に、あなた様をじっくりと観察させるのですわ」

彼女が指差す先にあるのは、本当にお姫様が使いそうな豪華な装飾のベッド。

ここで一体どんなふうに、観察されるのだろう。



「顔を真赤にしちゃってこの人間かわいいですわ。大丈夫ですわよ、私はヴァンパイアの中ではあまり種族に対する偏見が無い方ですの」

ベッドの上で、横並びになり、少女がじっくりこちらを見つめる。

「この程度、私にとっては拾った野良猫を、こっそりベッドに持ち込んで愛でるようなものですわ……まぁ、よく考えたら猫も人間も下等種族という点では変わりませんけど」

ゆっくりと頭を撫でながら、本当に動物を見ているような視線。

でも、自然とペット扱いされてるのに、何故か悔しさや恥ずかしさはない。

「さぁさぁ、ゆっくりとその緊張をほぐしてさしあげますわ」

まだ会って少しなのに、無邪気な顔を見せる吸血鬼に魅了されて、観察してもらえるのが嬉しくなってる。

これが種族の差なんだろうか、何でも差し出せそうな気持ちになってる。

「私、なんだか興奮してしまいました……この唇で優しく口づけをしてあげましょう」

吸血鬼の口づけ、本当なら怖くて拒否するはずなのに、命令されたみたいに逆らえない。

顔を近づけながら、少女が静かに口を開いた。



「んっ……んふっ……なんだか……初めてペットを飼った時を思い出しますわ」

吸血鬼の少女による、優しい口づけ。

人間を扱いなれてるのか、見た目からは想像できないぐらい上手に、何回も唇を重ねてくる。

「ええっ……んっ……まだ年齢も100歳ほどで……私もまだ未熟な頃でしたけど……父上母上に内緒で」

未熟な頃でその年齢、今の彼女は何歳なんだろう。



「こっそり野良の子を部屋に持ち込んで……このようにペットで愛でてあげたのです」

野良の子……さっきの猫の話だろうか。

「面白かったですわ……あのペット……こんな風に添い寝して………優しく乳首を撫でただけで……すぐ性器を大きくしましたの」

笑いながら、少しいじわるそうに猫と接した思い出を話す少女。

でも唇の動きは止めないで、何かを確認するように首筋へ這わせていく。

「まぁ野良の子ですから……んっ……躾等がなされて無くて……あたり前なんですけど……それがあの頃の私は面白かったのですわね」

軽く首筋を甘噛みされて、気持ちいい痛みを感じる。

「その時捕まえた野良の……人間がどうなったのか気になります? ふふっ……私もあの時はまだ純粋でしたわ」

喋りながら、少女がそっとこちらの体を抑え込む。

何で急に……いや、それより今……人間って言ったような。



「些細なことで興奮するあの子を見るのが楽しくて……初めてのペットがあまりにも可愛すぎて……んっ……思わず血を吸いすぎて……んふっ……すぐ殺してしまいましたの」

歯を立てず、焦らすように首筋を甘噛みされる。

「でもですね……その時のあの子の反応、凄かったのですよ……手足を激しく動かしながら……私の両手でしっかりと抑えこまれ」

体が動かない、見た目からは想像できない強い力で、ベッドの上に抑え込まれてる。

「このように……優しく首元にキスをされて……あっという間に干からびてしまいましたわ」

そのまま唇で、強く首筋を吸われて。

血が抜かれちゃう……俺も……殺されてしまう。



「さ、何も怯えることはありませんわ。貴方様はあの時のペットとは違う、もしかしたら私の運命の人かもしれないのですよ」

そう言うと、首筋から少女の唇が離れた。

「このベッドの上で愛しあいましょう……私、貴方様を気に入ってしまいました……特別に一晩、私と共に寝るのを許可しますわ」

笑いながら、まっすぐ少女がこちらを見つめる。

先程までと違い、その無邪気な視線が怖い。



「もしこの一晩で、貴方様が私を満足させられたのなら、きちんと責任をもって、元住んでいた地へ返してさしあげますわ」

こちらの返事を聞く前に、再び吸血鬼が覆いかぶさってくる。

「所詮ヴァンパイアと人間は異種族同士、お互い相容れない恋……ならば、一晩だけでも私に夢を見せるのです」

捕らえた人間を押さえつけながら、本当に悲しそうな顔をする少女。

多分この子は、最近読んだという本に影響されて、悲劇のヒロインを演じる自分に酔ってる。

「さ、もっと顔を近づけて……貴方様を、できるだけ長い時間愛したいのですわ」

きっと心の奥底じゃ、人間の事をただの餌だとしか思っていない。

彼女がこちらを愛するのに飽きた瞬間、吸い殺されてしまう。



「んっ……はぁ、柔らかい唇……んっ……顔の部位はほとんど変わらないのですわね」

少女が……激しく唇に吸い付いてくる。

「人間もヴァンパイアも……お互いを激しく舐め回して……愛の表現をするのですね」

顔を舐めて、まるで味を確かめるみたいに、

頬から首筋に、再び舌を這わせてくる。



「はぁ……我慢できませんわ……いいかしら……貴方様の血を……その白く細い首元から……そっと吸わせていただけないかしら?」

吸血鬼の鋭い歯が首筋に触れる。

最初に唇で吸い付いて、痛みを和らげてから、静かに歯が立てられる。



「駄目ですわ、私の命令、拒否することは許しません……そのまま……じっとしてくださいませ」

血が……吸われちゃう。

手を抑えられて、抵抗ができない……あっ……噛まないで。



「ふふっ、痛いのですか? 顔に……沢山の汗が流れてますわよ」

唇の柔らかい感触の後、軽く痛みを感じ、少女がゆっくりと噛んでくる。

「でも大丈夫ですわ……そろそろ痛みが抜けて……快楽を感じるはずですわ……んっ……ほら」

静かな部屋の中、何かが吸われるような音する。

最初以外痛みを感じないのが怖い、それどころか、だんだん気持ちよくなってくる。



「あらあら、性器が大きくなってしまいましたわね。いいですわよ、これは仕方がないのですから」

そう言うと、衣服に手をねじ込み、少女がこちらの性器を触り始めた。

「下等で力を持たない人間は……だからこそ種の数を増やすため……一年中発情していると聞いていますわ」

血を吸いながら、そのままじっくり撫でられて。

「だからこのような些細な刺激で……すぐ性器を膨らませてしまうのですわね」

何故か、興奮して大きくなってる。

血を吸われて、命の危険を感じてるはずなのに。



「はぁ……あなたの血、おいしゅうございました」

顔を離し、口元に残った血を、ハンカチで丁寧に拭き取る少女。

「わかっていますわ、今晩の私は貴方様の一夜だけの恋人……人間の慣習に習って……この手で性処理をしてさしあげますわ」

まだ恋人遊びは続いてる。

血を吸われたショックで動けないまま、衣服が少しずつ脱がされてしまう。



「こうでしょうか……このように……性器を優しく手で包んで……丁寧に撫でればよいのですか」

吸血鬼の前で裸になり、性器が綺麗な指先に包まされていく。

「はぁ……ビクビクと震えて可愛い性器ですわ……んんっ……顔もとろけていらっしゃいます……私の手淫で感じてくださってるのですわね……嬉しいですわ」

キスと同様、慣れた手付きでいじられて、体が異常に反応してる。

ベッドの上で喘いで、高貴な種族に触れられて嬉しい、気持ちいいって錯覚を起こしてる。



「いいですわ……どんどん撫でてあげますわ……だからお互いに高め合いましょう……一緒にこの夜を楽しみむのですわ」

撫でられながら、耳元で吸血鬼の声を聞いて、洗脳されているような気分。

「うふふっ……まるで獣みたいですわね……お互いに舌を絡めあい……その下では手に包まれた性器がビクビクと震える」

また少女の口づけ。

血を吸われた瞬間、彼女のペットになってしまったんだろうか、体が逆らえない。



「素晴らしい夜ですわ……ささっ……もっと気を楽にするのです」

そう言いながら、吸血鬼がこちらの手を自らの腰に回り込ませる。

「あら、どうしましたの? 急にしがみついてきて」

わざとらしい、芝居がかった声で驚く少女。



「うふふっ……まるで赤ん坊のようですわ」

まだ、彼女の中で恋人ごっこ、お人形遊びは続いてる。

このまま、おもちゃにされて犯されてしまう。



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